[AI書房] 第21章 4段階フレームワーク: 家、生命、手、成長
Claude Code完全攻略
第6部
第21章 4段階フレームワーク: 家、生命、手、成長
金京鎮
導入
画面が4つ同時に動いています。1つは今日のスケジュールを組んでくれ、もう1つはLinkedInの投稿文を作成し、3つ目はチームのプロジェクト進行状況を確認し、4つ目はYouTube動画用の視覚資料を作成しています。これは米国のAI自動化コンサルタントが毎朝出勤した際に目にする光景です。4つのエージェントが並列で動作するのにかかる時間は約2分。同じ作業を手作業で行えば25分以上かかります。
このコンサルタントのプロジェクトフォルダの左パネルには、数十ものファイルやフォルダがぎっしりと詰まっています。コンテキストファイル、意思決定ログ、スキルフォルダ、エージェント設定まで。初めて見る人は圧倒されてしまうでしょう。しかし、この構造は一夜にして作られたものではありません。毎日少しずつ、4つの段階を踏み積み上げてきた成果物です。
その4つの段階とは、Home(家)、Life(生命)、Hands(手)、Growth(成長)と呼ばれています。
1段階「家」:プロジェクトフォルダ構造とclaude.mdの設計
建物を建てる前に土地を整えるように、AI エグゼクティブ・アシスタントを作るには、まずそのアシスタントが活動する場を準備する必要があります。ここで言う「家」とは、プロジェクト用のフォルダ一つを指します。
VS Code(Visual Studio Code)を開き、デスクトップまたは任意の場所に新しいフォルダを一つ作成します。フォルダ名は自由に決めて構いませんが、このフォルダがアシスタントの全作業領域となることを覚えておいてください。VS Code の左側のエクスプローラーで「フォルダを開く」をクリックし、先ほど作成したフォルダを開くと、そこにはまだ何も書かれていない白いキャンバスが広がります。ファイルはまだ一つも存在していません。
[図 21-1] VS Code で空のプロジェクトフォルダを開いた際の画面構成
次に、この空の空間に最初のファイルを配置しましょう。左側のパネルから「新規ファイル」をクリックし、ファイル名を「CLAUDE.md」と入力します。このファイルがアシスタントの脳として機能します。なぜなら、エージェントがユーザーのメッセージを読み取る前に、毎回このファイルから読み込まれるからです。
もし CLAUDE.md にすべての情報を詰め込んでしまうと、会話のたびに膨大なテキストが読み込まれ、モデルが消費するトークンが無駄になってしまいます。そのため、このファイルには核心的なルールと「どこに何があるか」を示す道案内のみを記載し、実際の詳細情報は別々のファイルに格納します。CLAUDE.md はルーター(Router)として機能するように設計されているのです。
[図 21-2] CLAUDE.md のルーティング構造ダイアグラム
開始段階では、CLAUDE.md は 10 行から 20 行程度で十分です。このファイルはアシスタントが成長するにつれて共に進化していくものなので、完璧に埋めようと努力する必要はありません。87 行程度が適正ラインであり、150 行、多く見積もって 200 行を超えないようにするのが良いでしょう。
エージェントに「このフォルダは、あなたが私のエグゼクティブ・アシスタントとして活動する空間です。CLAUDE.md に簡単な説明を記してください」と伝えれば、エージェントが自動的に初期内容を記述してくれます。これで家の基礎が築かれます。
フォルダ構造は、エージェントが自動的に生成することもよくあります。一般的には、以下のような骨組みが整います。
[図 21-3] エグゼクティブ・アシスタント・プロジェクトの標準フォルダ構造
各フォルダの役割は、その名前から推測できるでしょう。context にはユーザーや業務に関する情報が、decisions には重要な意思決定の記録が、projects には進行中のプロジェクトごとのサブフォルダが格納されます。この構造を暗記する必要はありません。エージェントに「このフォルダは何をするものですか?」と尋ねれば、説明してくれます。
ここで一つ、実用的なアドバイスがあります。このプロジェクトを GitHub にアップロードしておけば、あらゆるデバイスからリポジトリをクローンして、すぐにアシスタントを使用できます。バックアップ、ロールバック、バージョン管理も自動的に付随します。もちろん、ローカルの Git コミットのみから始めることも問題ありません。GitHub 連携は後からでも構いません。
2 ステップ「生命」:インタビューによるコンテキスト構築
空の家に家具を運び込み、冷蔵庫に食材を詰め込み、壁に写真を飾るプロセスが、まさに 2 ステップです。これはエージェントがユーザーを理解していく時間です。
このプロセスはインタビュー形式で進行します。事前に用意されたオンボーディングプロンプトをエージェントに渡すと、エージェントが質問を投げかけ始めます。「お名前は?」「役割は?」「活動時間帯は?」といった基本的な質問から始まり、事業内容、チーム構成、現在の目標、コミュニケーション方法まで、一つひとつ掘り下げていきます。
この時の核心原則は「正直に、十分に」です。エージェントが質問する際に誠実に答えるほど、後で「ああ、これも教えておくべきだった」と同じ文脈を繰り返して説明する回数は減ります。答えがわからない項目は「スキップ」とお答えいただいても構いません。後で埋められますので。
エージェントの質問は、おおむね六つの領域を扱います。
1. 個人情報:氏名、役割、タイムゾーン、業務スタイル 2. 事業と業務:会社名、事業分野、主要な製品またはサービス 3. チーム:共に働く核心人物、役割分担 4. 優先順位と目標:今四半期の目標、緊急課題、年間の方針 5. 通信の好み:簡潔な回答を好むか、詳細な説明を望むか 6. 自動化希望業務:反復作業、委任したい業務
インタビューが終了すると、エージェントは回答に基づいて四つの核心ファイルを生成します。
[図 21-4] インタビューに基づくコンテキストファイル生成フロー
これらのファイルは context フォルダ内に保存されます。また、CLAUDE.md は自動的に更新され、「ユーザー情報が必要であれば context/me.md を参照してください」といった形でパスを案内します。
これに加えて、追加のファイルも生成されます。decisions/log.md には、日付、決定内容、理由、文脈を伴う主要な意思決定が記録されます。プロジェクトごとのフォルダには、各プロジェクトの説明ファイルが格納されます。.claude/rules/ フォルダには、コミュニケーションスタイルに関するルールが保存されます。具体的には、ダッシュ(em dash)の使用を避けること、内部コミュニケーションはカジュアルに行うことなどの詳細な指示です。
これらの手順が完了すると、エージェントは最初の Git コミットを実行します。これは最初のスナップショットが保存される瞬間です。
一つ覚えておいてほしい点があります。これらのファイルは固定された文書ではありません。事業の方向性が変われば work.md を、新しいチームメンバーが加われば team.md を更新すればよいのです。エージェントに「これを覚えておいて」と伝えると、その情報は適切なファイルに反映されます。
3 段階「手」:最初のスキルを作成する
家を建て、命を吹き込んだので、次は手を加える時です。エージェントが単に考えるだけでなく、実際に何かを実行できるようにする段階です。
スキル(Skill)は再利用可能な指示文です。一度作成しておけば、スラッシュコマンドや自然言語でいつでも呼び出すことができ、毎回同じプロセスに従うため結果の一貫性が高まります。先にワークフローという概念を取り上げましたが、スキルはワークフローの別名と捉えてください。ワークフローにツール(Tool)があったように、スキルにはPythonスクリプトがあります。本質は同じです。
最初のスキルとして何を作るとよいでしょうか。プロジェクト管理ツールとの連携は実用的な選択です。ClickUp、Notion、Asanaなど、ご自身が使用するツールのAPIキーを.envファイルに格納し、エージェントがそのツールと通信できるようにスキルを構成します。
スキル作成のプロセスを、リサーチスキルを例に確認しましょう。プランモードでエージェントにこう伝えます。「リサーチスキルを作成してください。Perplexity APIを使用します。まず.envファイルを作成し、スキルの役割は単なるウェブ検索ではなく、事業の文脈を反映した深掘り調査です」と。
エージェントはプロジェクト構造を探索し、必要に応じてサブエージェントを起動して構造を分析した上で計画を策定し、戻ってきます。その計画には以下が含まれます。
[図 21-5] スキルの基本構造:YAML フロントマターと段階的な指示
スキルファイルの構造は明快です。上部には YAML(YAML Ain't Markup Language)のフロントマターがあり、その下には Markdown で記述された段階的な指示が続きます。フロントマターにはスキルの名称と説明が記載され、エージェントはこの部分のみを読み、どのスキルを呼び出すかを判断します。全体の指示は、スキルが選択された後にのみ読み込まれます。
この方式を「段階的コンテキストローディング(Progressive Context Loading)」と呼び、モデルが不要なテキストを生成する無駄を防ぐための核心的なメカニズムです。
スキルが完成したら、検証を行ってください。「リサーチスキルを使ってポートランドのアイスクリームイベントを調査してください」と入力すると、エージェントはスキルを読み、Perplexity API を呼び出し、結果を整理して research フォルダにレポートとして保存します。レポートには出典のリンクも含まれます。
サブエージェントを活用することでコストを削減できます。メインエージェントは Opus モデルを使用しますが、リサーチをサブエージェントに委譲することで、Haiku のように軽量なモデルを指定できます。リサーチの品質は Perplexity API が保証し、整理と要約のみを軽量モデルが担当するため、品質を低下させることなくコストを削減できる構造です。
補助エージェントは、.claude/agents/フォルダにマークダウンファイルとして保存され、独自のコンテキストウィンドウを持って独立して動作します。
4段階「成長」:毎日使用してアシスタントを進化させる
4段階には特別な設定は必要ありません。毎日使用すること自体が4段階です。
前述のAI自動化コンサルタントのアシスタントも、最初から数十ものスキルと緻密なコンテキストを備えていたわけではありません。初日は空のフォルダ一つとCLAUDE.mdの一行だけでした。しかし一ヶ月後、そのプロジェクトは全く異なる姿へと変化していました。文書が増え、意思決定のログが蓄積され、スキルが追加され、エージェントの回答精度が著しく向上したのです。
成長の秘訣は修正意見の循環(フィードバック・サイクル)にあります。スキルを呼び出し、エージェントが作業する過程を観察し、「この部分は良かったが、この部分は修正が必要だ」と伝えると、エージェントがスキルファイルを修正します。最初の数回では、生成された結果にAIらしさが目立つかもしれません。しかし十回、二十回と繰り返すうちに、利用者の嗜好や業務の文脈がスキルに深く刻まれていきます。
具体的な成長戦略は以下の通りです。
既存のツールを移行する。ChatGPTのカスタムGPTやClaudeプロジェクトに保存したシステムプロンプトがあれば、その指示をスクリプトとして引き継ぎます。「このプロンプトをスクリプトに変換してください」とエージェントに依頼するだけです。
反復作業を捉える。同じ指示を二度以上出している場合は、それがスクリプト化の候補です。毎回「EmDashを使わないで」と言っているなら、そのルールはスクリプトやルールファイルに一度記述しておく方が賢明です。
エージェントの作業過程を観察する。最初の数回は、エージェントがスクリプトを実行する様子を見守る必要があります。不要なAPI呼び出しを繰り返している場合は、頻繁に使用するID値をスクリプトファイルにハードコードし、モデルが生成するテキスト量と時間を節約できます。この観察と改善のループが成長を加速させます。
新しいフォルダを自由に追加する。ブランドアセット(Brand Asset)フォルダを作成し、ロゴ、フォント、ブランドガイドラインを格納しておけば、コンテンツ生成スクリプトがブランドの一貫性を維持できます。フォルダを追加した後、エージェントに「brand-assetsフォルダを追加しました。CLAUDE.mdを更新してください」と伝えればよいのです。
[図 21-6] 時間経過に伴うアシスタントの進化曲線:1日目 vs 30日目
自動メモ機能も活用できます。「私は常に X を好むことを覚えておいて」と伝えると、エージェントがその内容を適切なファイルに保存し、後の会話で自動的に反映します。
既存の ChatGPT やカスタム GPT と差別化されるポイント
ChatGPT や Claude の Web インターフェースでメモを保存し、カスタムプロンプトを設定するだけでも生産性は向上します。しかし、そこには限界があります。「この文脈も理解してほしい」と感じる瞬間、結局は追加の説明をタイピングすることになります。50% までは迅速に到達できますが、90% に達するのは困難です。
違いが生じるポイントを見ていきましょう。
ファイルシステム全体へのアクセス。カスタム GPT はチャットウィンドウ内でのみ動作しますが、コードベースのエグゼクティブ・アシスタントはプロジェクトフォルダ内のすべてのファイルを読み書きできます。me.md、work.md、priorities.md、リサーチレポート、意思決定ログなど、エージェントが必要な瞬間に必要なファイルを直接開きます。チャットウィンドウにすべてのコンテキストを貼り付ける必要はありません。
ツール実行能力。カスタム GPT はテキストを生成するだけですが、エグゼクティブ・アシスタントは Python スクリプトを実行し、API を呼び出し、ファイルを作成し、サブエージェントを起動します。カレンダーを確認してスケジュールを自動的にブロックしたり、ClickUp からタスクステータスを取得したりするといったすべての動作が、チャットの一語で可能です。
コンテキストの永続性と構造化。対話が続くとコンテキストウィンドウの限界に達します。エグゼクティブ・アシスタントは重要な情報をファイルとして分離して永久保存します。対話を初期化してもファイルは残るため、次のセッションですぐに以前のコンテキストを継続できます。記憶を失わない秘書のような存在です。
成長の可能性。カスタム GPT のシステムプロンプトは静的で、手動で修正する必要があります。一方、エグゼクティブ・アシスタントは使用するほどにファイルが増え、スキルが洗練され、意思決定の履歴が蓄積されます。エージェントに「この経験を記録しておいて」と指示すれば、次回似た状況が来た際に、より良い判断を下すための基盤となります。
[図 21-7] 従来の ChatGPT 方式とエグゼクティブ・アシスタント方式の比較表
まとめ
4 つの段階は順番に踏んでいただきますが、その速度は自由に調整してください。家を建てるのに10分かかれば十分ですし、命を吹き込むためのインタビューは時間をかけて丁寧にこなすほど、その後の作業が楽になります。最初のスキルは小さく始めて、毎日一つずつ修正意見をいただきながら育てていきましょう。
このフレームワークの真の力は、3 つ目の段階で作った最初のスキルが毎朝実際に動き出すときに発揮されます。カレンダーを読み、プロジェクトの状況を確認し、今日何をすべきかを整理してくれるそのスキル — 「モーニングコーヒー」と呼ばれるルーティンが一日をどう変えるのか、続く物語で確認していただきます。




